あの日の夢をつかまえて
「お守り、ありがとうね。これは香夜ちゃんが持ってて」
テーブルの上に青空色の巾着袋をそっと置くみぃくん。
巾着袋の中で駒同士がぶつかったのか、コツンと音を立てた。
「……ごめんね、負けちゃった」
みぃくんはそう言って、顔を上げた。
それからニコッと笑って、
「将棋から離れようと思うんだ」
と、続けた。
「みぃくん……」
「ずっと思ってた、限界だって。今までだって順調にきたわけじゃないけど。将棋が好きだから、しがみついてきたんだ」
「うん」
返事をした私の声が、涙声になってしまった。
隣にいるみぃくんの、その手にそっと触れてみる。
色白で、細くて。
美しい長い指。
私の大好きな、みぃくんの手。
みぃくんは優しい動作で、私の手を両手で包んだ。
「しがみつく力、なくしちゃったみたいだ」