あの日の夢をつかまえて
(じゃあ、みぃくんってすごい人なんだ)
その時はいつもニコニコ穏やかなみぃくんが、そんなに厳しい勝負の世界に身を置いているなんて想像も出来なかったっけ。
秋が深まってきた夜。
浴室でシャワーを済まし、手早くパジャマを着る。
(もうシャワーだけじゃ、少し寒いなぁ)
化粧水と乳液をそっと顔に伸ばして、美容クリームを浸透させる。
そのまま寝室に直行して、ベッドに腰かけた。
枕元に置いていたスマートフォンが振動したから手に取り画面をのぞくと、みぃくんからの着信だった。
「もしもし、みぃくん?」
『香夜ちゃん、今大丈夫?』
大丈夫だよと伝えるとみぃくんは、
『用事はないんだけど、声が聞きたくて』
と、小さな声で言った。
「元気ない?」
『元気だよ……、でも半分はそうじゃないのかも』
触れていい話題なのかな。
少し考えてしまったけれど、
「仕事のこと?」
と、勇気を出して尋ねてみる。