あの日の夢をつかまえて

「みぃくんにとっても、そうだったらいいのに」



ぽつりと呟くと、みぃくんが寝返りをうった。

そっぽを向かれる。

そのことが寂しくて。

夢の中にいるみぃくんの背中に抱きついた。







山方先生は年内で教室を辞めた。

みぃくんは年明けから、あの教室で将棋を教えている。

仕事終わり。

待ち合わせたカフェで。

私達は向かい合って座って、コーヒーを飲んでいる。



「詰め将棋?」



みぃくんが鞄から取り出したプリントの文字を、私は声に出して読んでみた。



「これ、明日みんなに解いてもらう課題にしようと思って、作ったんだ」



見て、と私にプリントを渡してくれる。

なんだか宿題を終えた子どもみたいな、達成感あふれるその笑顔に、胸がキュンとなる。



「詰め将棋、とは?」



私も片手のこぶしでマイクを作り、みぃくんの口元へ寄せる、小さな子供みたいなことをしてしまう。


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