あの日の夢をつかまえて
「詰め将棋のコツってあるの?」
みぃくんにプリントを返しつつ、また質問してみた。
「コツ……。そうだなぁ。玉の逃げ道を考えてみて、ここに逃げられるってわかったら……」
「わかったら?」
「その逃げ道をなくしちゃうような1手を指すこと、かな」
珍しくみぃくんが、不敵な笑みを見せた。
「えー、なんか意地悪な顔してるよ、みぃくん」
「いやいやいや、勝負だから」
みぃくんは穏やかな笑顔に戻って、
「あとは繰り返し解いて、手順を覚えるといいよ。そしたらきっと強くなる」
と、続けた。
「そっか。手順って、戦術みたいなことなんだ?」
「そうだね。戦術をいくつ覚えているかで、勝つための選択肢が増えるからね」
コーヒーをひとくち飲んで、
「明日、教室のみんなに解いてもらうのが楽しみだなぁ」
と、みぃくんがプリントに視線を落とした。
カフェを出ると、寒さで体がぶるっと震えた。