あの日の夢をつかまえて

第2話


それから。

数日が経った。



みぃくんは相変わらずニコニコして、穏やかに過ごしている。

……ううん。

きっとそういうふうに過ごそうとして、頑張っているんだと思う。



傷ついていないはずなんてないから。






仕事が終わって。

まっすぐ帰る気になれなくて。

私は電車に乗って××将棋教室の前まで来てしまった。



この扉の向こうで、みぃくんは将棋を教えているんだなって思った。



「澤田先生ぇ、わかりませーん」



創路くんの声。



「創路くん、惜しいよ。これ、もう少し考えてみたらきっと解けるよ」



みぃくんの優しい声も聞こえてきた。



「え!?これ、惜しいの!?じゃあ、まだ答えは言わないで!!ひとりで解けるなら挑戦したい!!」



みんなの笑い声の中に、みぃくんの笑い声を見つけた。

穏やかで、楽しそう。

本当は少し待って、一緒に帰るつもりだったけれど。

私は安心したこともあって、ひとりでビルを出た。


< 40 / 51 >

この作品をシェア

pagetop