あの日の夢をつかまえて
『立派な夢だと思うよ、ウエディングドレス』
どう返事をしていいのかわからなかった。
でも。
ものすごく嬉しかった。
顔を上げて、みぃくんが私を見た。
『どう言われても強くいられるお守り、あげる』
そう言ってみぃくんは、私の手のひらに小さな木でできた何かを2つ、そっと置いた。
それには文字が書いてある。
『「飛車」?「角行」?』
読み上げて不思議な顔をしている私にみぃくんは笑顔を向けた。
『将棋の駒だよ。強い駒。自分を守ってくれるよ、きっと』
ーーーそこで目が覚めた。
そのことで夢だったんだ、と自覚する。
本当にあった、遠い昔の記憶の夢。
いつもと違う天井。
ぼんやりとした頭で、みぃくんの部屋に泊まったことを思い出す。
枕元に置かれた時計を見ると、午前4時だった。
上体を起こし、ベッドのそばのサイドテーブルに手を伸ばす。
青空色の小さな巾着袋。
この中に、あの日貰った2つの駒が入っている。
それをそっと持ち上げて、ひざの上にちょこんと乗せた。