あの日の夢をつかまえて
「……香夜ちゃん?」
隣で眠っていたみぃくんがもぞもぞと起き上がり、眼鏡をかけた。
「どうしたの?」
いつもと違って少しかすれた声のみぃくんに、密かにドキドキする。
「ごめん、なんでもないよ」
みぃくんは私のひざの上にある巾着袋を見つけて、
「ずっと持ち歩いてるよね、それ」
と、笑顔を見せた。
「お守りだもん」
「あの時さー、香夜ちゃんにそれを渡した時、オレ実は緊張してたんだ」
「え?」
「だって初めて好きな人と会話してさ、お守り渡す時も心臓が嘘みたいにドギマギしてて」
「えー?」
大人になって再会し、付き合い始めて少し経った頃。
みぃくんが「実は高校時代、香夜ちゃんに片想いしてたんだよ」と、打ち明けてくれたことがあった。
でもお守りをくれたあの時、すでに想ってくれていたなんて思いもしなかった。
「知らなかったー!」
「好きじゃなかったら、大事な駒を渡したりしないよ」