あの日の夢をつかまえて
みぃくんは笑いながら、
「でも勇気を出して良かった。香夜ちゃんにとってもそれがお守りになって嬉しい」
と、続ける。
「みぃくん」
私はみぃくんのほうへ向き直り、
「お守り、みぃくんが持っていて」
と、巾着袋を渡した。
「次の対局、みぃくんが納得のいく試合になりますように」
「……うん」
ニィッと笑ってみせる。
「大丈夫だよ」って意味を込めて。
でも。
一拍置いて、みぃくんの目から涙がこぼれた。
「ごめん、オレ……」
思わずみぃくんを抱きしめる。
私の腕の中でみぃくんが絞り出すような声で呟いた。
「……怖いんだ」
「……」
「こんなに将棋が好きなのに、苦しくて、苦しくて。いつか嫌いになってしまいそうで怖いんだ」
「みぃくん……」
何か言ってあげなくちゃ。
そう思うものの、言葉が見つからない。
ただ黙って。
私はみぃくんを抱きしめることしかできなかった。