朝、キスして。
後ろで椅子を引く音がして。
手を振って逃げていく平常心。
『有咲ちゃん、グッドラーック!』
いやぁー私を見捨てないでーっ!
「有咲」
名前を呼ばれて、ビクッとなる。
とりあえず平常心とはおさらばして。
軽く振り返る。
後ろの席に座ろうとしていた瞬は、あの頃から何も変わらない笑顔で
「よろしくな」
そう言った。
これはめぐり合わせ?
関わらないときは本当に関わらないのに、一度関わってしまえば運命の輪がカチッとハマったみたいにめぐってくる。
平常心を失った私の心臓は、徐々に鼓動を速めていた。