朝、キスして。

まんまるの黒目がまぶたに隠れることなく見える。

と同時に、口角も上がって。


「やっぱり!」


さらには声も上げる。


「てことは、有咲が瞬のす……!」


だけど、続く言葉は遮られた。

……身を乗り出してまで、瞬が止めに入ったから。


「おまえっ、ふざけんな」


その顔にわかりやすいほどの焦りを乗せて、吉田くんの口を塞ぐ。


瞬のす?

なんだろう?何を言おうとしたんだろう…?


「なんでもないから。気にしないで」


さっきまでの飄々とした笑みはどこへやら。

瞬は、焦燥感たっぷりの笑顔で、そう言った。


対して、口止めされた吉田くんは、目尻を下げていた。



……というようなことがありました。


ハルくんに自分から幼なじみだと打ち明けた時点で、隠し通すつもりはなかった。

ただ、明かし方というものがありましてね。


今朝ママが『結婚』なんて単語を口にするから、瞬があんな意地悪したんだよ、きっと。


おかげで、衝撃を存分に含んで、幼なじみであることが伝わってしまった。

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