朝、キスして。

悩みってほど悩んでいるわけじゃない。

ただ……。


「なぁ。あんたってさ」


ハルくんの頭頂部をじっと見ていた私。

ふと、ハルくんが顔を上げたことで、彼と目が合った。


見下ろす私と見上げるハルくん。

刹那の間のあと、彼が口を開いた。


「瞬のことどう思ってんの?」


それは、よくよく考えれば突飛な質問だった。

だって私は、一度も瞬の名前を出していないのだから。


悩みってほど悩んでいるわけじゃない。

ただ……。


瞬のことを考える時間は多い。


それがハルくんにも伝わってしまったのだろう。

そう思った私は、質問の意図を考えようとはせず、至極当然な疑問として受け止めた。


だとしても、気軽に答えられる質問ではないけど。


瞬と距離があった頃よりも、普通に話せる今の方が断然嬉しい。

それは認める。


だからこそ、それ以上の答えを出すのが怖い。

今が1番いい状態じゃないかと思えば思うほど、私は考えるのを放棄したくなる。


……どう思っているか?


「ただの幼なじみだよ」


それが精一杯の譲歩。

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