朝、キスして。
ハルくんは視線を戻すと、
「あっそ」と呟いたきり口を閉ざした。
……そろそろ教室に戻ろうかな。
振り返った私。
瞬間、身体が強張る。
「っ!」
こっちに向かって歩いてくる男子……。
赤茶色の髪に、耳にはシルバーのフープピアスが煌めく──元カレの輝くんを見つけたから。
向こうも私に気づいて、一瞬目を見開いたけど、すぐに鋭い目つきに戻した。
「久しぶり」
「うん……」
私の前まで来ると、立ち止まって声をかけてきた。
一方的に別れを切り出されて……。
気まずくないと言ったら嘘になる。
でも、瞬にも言ったけど、私は後に引きずるタイプじゃないから、避けてまで顔を合わせたくないとは思わない。
「もう新しい男できたんだ?」
「え?」
「噂流れてるよ」
別れた私たちはもう他人になったんだ、と見下ろす輝くんの瞳を見て実感した。
元々表情がクールな人だけど、私に対してこんなに冷たい目を向ける人ではなかった。
……のはどうでもいい。
今、なんて言った?
新しい男?噂?