朝、キスして。

……噂はなんとなくわかる。

瞬のことか、それかハルくんとのこと。


だけど、新しい男ってなに?


「なんのこと?」

「渡邉晴臣とキスしてたって」

「……っ」

「氷王子をモノにできるなんてすげぇじゃん」


“すげぇじゃん”

抑揚なく発せられたその言葉に、意味通りの感心はない。

あるのは、滲み出る嘲弄。


「してない。それに付き合ってもいない」

「どうだか。……そういや、瞬とも噂になってたな」

「瞬とは……」

「おまえ、俺と付き合ってたときもそうだったの?」


瞬とは幼なじみなだけ──そう言おうとした私に、輝くんが無理やり言葉を被せてきた。

それも、強い口調で。


何が言いたいのか理解できない私は、“なにが?”と訊き返そうと思った。

だけど、続く言葉に無理やり口を閉ざされる。


「男にいい顔して、とんだビッチだな」

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