朝、キスして。

デートの約束をしていたのに、友達との約束を優先されそうになったことがあった。


『悪い。友達がどうしてもその日に会いたいって言うから』


いつもならしょうがないかってなるけど、その日はバレンタインの日だったから食い下がった。


『……でも、バレンタイン』

『はぁ……。友達付き合いも大事なんだよ。それくらいわかれよ、……面倒くせぇな』


ため息をついて、輝くんはそう言った。


嫌われたくない私は何も言い返せなくて。

会う友達が女子だと知っていても、黙って従った。


……でもね、私にだってプライドはある。


「もう輝くんには関係ないよね?」


“嫌われたくない”という気持ちが、すでに自分の中から失われている。

だから言い返すこともできるし、誤解されてもその誤解を解きたいなんて思わない。


「まぁ関係ねぇけど……。おまえ、そんなんだから女子に嫌われ……」

「そこまでにしたら?」

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