朝、キスして。
……すっかり忘れていた。
そういやハルくんがいたんだっけ。
会話を遮る声が貫いて、見てみれば……。
さっきまで姿を隠すように座っていたハルくんが、窓枠に肘をついて顔を覗かせていた。
その表情からは感情を一切読み取れない。
しかし、無表情とは違って……。
研ぎ澄まされた鋭さだけを感じる。
「仮にも彼女だった子に言う言葉?」
一瞬、ビュオォォォと吹雪く背景が見えて、目を擦りたくなったくらいだ。
ハルくんはそのまま言葉を繋ぐ。
「自分のことを棚に上げて、よくそんなことが言えるよな。いい噂がなかったのそっちじゃん」
あまり噂話に興味がなさそうなハルくんの耳にも入るくらい、輝くんの素行は広く知れ渡っているらしい。
ただ、面と向かって指摘されるのは初めてだったのだろう。
それにはさすがの彼も顔をしかめた。
「は?おまえに関係……」
「おまえよりは関係あるよ」
だとしても、ハルくんはピクリとも眉を動かさない。