朝、キスして。
「え、なにその反応。照れるんですけど」
「照れるじゃないよ!なんで裸!?」
「着がえてるから」
ごもっともですけど。
ならどうして出てきた?って意味で聞いたんだけど……。
「それより、これ、取りにきたんだろ?」
「え?」
「体育着」
目のやり場に困りながら受け取ったそれは、私の体育着袋だった。
どうして……。
私が体育着を取りに来たって理解して、届けに来てくれたの?
……今の一瞬で?
「…あ、ありがと……」
俯きながらお礼を言って、一刻も早くそこから立ち去った。
このとき、私の中にあったのは、ひと言では言い表せない感情。
尾を引く恥ずかしさとか、遅刻回避できそうなことへの安心とか。
それから……不意に見せる瞬の優しさへのときめき、とか。
諸々が同時に存在するんだから、絡み合ってこんがらがる。
そんな複雑な感情を抱えながら、私は早歩きで更衣室に向かった。