朝、キスして。

「え、なにその反応。照れるんですけど」

「照れるじゃないよ!なんで裸!?」

「着がえてるから」


ごもっともですけど。

ならどうして出てきた?って意味で聞いたんだけど……。


「それより、これ、取りにきたんだろ?」

「え?」

「体育着」


目のやり場に困りながら受け取ったそれは、私の体育着袋だった。


どうして……。

私が体育着を取りに来たって理解して、届けに来てくれたの?

……今の一瞬で?


「…あ、ありがと……」


俯きながらお礼を言って、一刻も早くそこから立ち去った。


このとき、私の中にあったのは、ひと言では言い表せない感情。


尾を引く恥ずかしさとか、遅刻回避できそうなことへの安心とか。

それから……不意に見せる瞬の優しさへのときめき、とか。


諸々が同時に存在するんだから、絡み合ってこんがらがる。


そんな複雑な感情を抱えながら、私は早歩きで更衣室に向かった。


< 135 / 343 >

この作品をシェア

pagetop