朝、キスして。
「無敵に見えるもんね。自分の知らない思い出を持ってるんだなぁとか、自分よりもその人のことをわかってるのかなぁとか」
「だからって、そのことを指摘できないし」
「うんうん」
複雑な乙女心を打ち明ける彼女たち。
私はそれをどういう面持ちで聞けばいい?
異性の幼なじみがいる側の人間だから、彼女たちの話でいえば、私は嫉妬を向けられる側。
だけど、複雑なのは私も同じ。
ずっと瞬への気持ちはゆるぎないものだった。
でも、中3のあの出来事を境に……。
幼なじみじゃなかったら、こんなことにはならなかったかもしれない。
幼なじみじゃなかったら、こんなに拗れることもなかったかもしれない。
……そう思うことが増えた。
その結果が、“幼なじみには戻れない”。
小さい頃に知り合って、たまたま長く関係が続いた──その程度の軽い関係だと思うことで、瞬との関係を断ち切ろうとした。
幼なじみはあくまで関係を示す言葉。
無敵でもなんでもない──と。
「そう?ただの幼なじみでしょ」
だから、1人の発した言葉に心を抉られたりしない。