朝、キスして。
早歩きで帰ったせいか、いつの間にか家に着いていた。
家のドアの前に立って左を向くと、瞬の家がある。
ずっと変わらない距離。
近いようで遠く、遠いようで近い。
ガチャリと鍵を回してドアを開けたとき、後ろから小さい頃の私と瞬が追い抜いていった。
『ただいまー』
『おじゃましまーす』
────幻覚。
いつの日かも特定できない私の記憶。
生まれたときから一緒にいて、当たり前に隣にいた存在。
瞬への想いに迷いはなく、それが私の1本筋だった。
今の私はどうだろう。
幼なじみに戻れないとか、今が1番いい関係とか。
質問に対して言い訳ばかり並べて、答えを先延ばしにしている。
そういうの全部、1回取っ払って考えて。
“YES”か“NO”かでしか答えられないとき。
私が出す答えは──
『少なくとも俺は、有咲がしてくれたこと嬉しかったよ』
『暗くて怖いときはよく手繋いでたじゃん』
『なんか機嫌いいね』
『俺は有咲の言葉だけ信じる』
『俺以外に触らせんな』
『有咲は俺のだから』