朝、キスして。
森下を残して、俺は教室を出た。
「あっ、瞬!どういうことだよ!?」
下駄箱に行くと吉田が右往左往していて、俺を見つけるなり勢いよく駆け寄ってきた。
「なにが?」
「おまえ、有咲が好きだったんじゃないのかよ?」
「好きだよ」
「じゃあなんで森下とデートするんだよ!?」
鬼気迫って何を言うかと思えばそれで……。
一瞬、マジで何を言っているのかわからなくて思考が停止しかけた。
……そういや森下が適当なことを吹聴したんだっけ。
なんで吉田の耳にまで入っているのか知らないけど、大方、女子たちから聞いたのだろう。
迷惑な話だ。
「しねぇよ。するわけねぇだろ」
「でも、瞬から誘ったって……」
「俺は話があるって言っただけで、森下が勝手に勘違いしたんだよ」
「なんだそっか、ならよかった……って、よくねぇ!」
せわしなく声を上げる吉田。
耳元で大声を出すものだから、俺は思わず耳を塞いだ。
「いきなりなんだよ」
「まずいよ!有咲は誤解したままじゃん!」
「有咲…?」
なんでそこで有咲の名前が出てくるんだ?