朝、キスして。

────ピンポーン。


それは福を報せる鐘か、はたまた禍を呼ぶ鐘か。

なんて大げさなものではなく……来客を告げる鐘。


玄関に入って靴を脱ごうとしたときにチャイムが鳴った。


いちいちインターホンへ行くのも億劫なので、ドアののぞき穴から来客を確認する。


……え?


────ガチャリ。

閉めたばかりの鍵を開けて、ドアを開いた。


「なんで……っ」


なんで瞬がいるの?


言葉を失うほど驚く。

そこにいたのは、紛れもなく瞬だった。


「入っていい?」

「う、うん……」


状況が理解できないまま瞬を招き入れた。

まっすぐリビングへ向かう瞬の後ろを、頭にはてなマークを浮かべながらついていく。


瞬は誰もいないリビングを見渡したあと、振り返って訊いてきた。


「今、有咲1人?」

「うん……」


パパもママも仕事で、夕方まで家には私1人。

……ていうか。


「森下さんは…?」


ようやく疑問を口にした。


私にしてみれば当然の疑問で……。

だって、瞬から誘ってデートするって聞いたから。

だからなんで瞬が今ここにいるのかわからない。

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