朝、キスして。

「あれ、大げさでもなんでもなくてさ。昔からそこだけは変わらなくて……つーか、絶対に信じて疑わない、一種の宗教だな。“有咲教”みたいな」


行動とは裏腹に、軽口を叩く瞬。

口元に小さく笑みを浮かべる。


「なにそれ。全然嬉しくない」

「でも、何があっても信じられるものがあるって強いよ?迷わなくて済む」


まあ、確かに……。


『俺は有咲の言葉だけ信じる』

あのとき言われた言葉は、今思い出しても嬉しいけど、それ以上に凄いなと思う。


私にはそこまで言いきれるほど信じられるものってない。


瞬のことは信じているけど、だからこそ、時には不安になったり噂に簡単に惑わされたりしてしまう。


これだけは信じられる!

そういう芯のようなものが1つでもあれば、きっともっと強く立っていられるんだろうな。


「……だからさ」


瞬が言葉を続けようとしたので、落ちた視線を上げる。

届いたのは──


「有咲も、俺の言葉だけ信じてほしい」


濁りなき眼だった。

< 157 / 343 >

この作品をシェア

pagetop