朝、キスして。
「あれ、大げさでもなんでもなくてさ。昔からそこだけは変わらなくて……つーか、絶対に信じて疑わない、一種の宗教だな。“有咲教”みたいな」
行動とは裏腹に、軽口を叩く瞬。
口元に小さく笑みを浮かべる。
「なにそれ。全然嬉しくない」
「でも、何があっても信じられるものがあるって強いよ?迷わなくて済む」
まあ、確かに……。
『俺は有咲の言葉だけ信じる』
あのとき言われた言葉は、今思い出しても嬉しいけど、それ以上に凄いなと思う。
私にはそこまで言いきれるほど信じられるものってない。
瞬のことは信じているけど、だからこそ、時には不安になったり噂に簡単に惑わされたりしてしまう。
これだけは信じられる!
そういう芯のようなものが1つでもあれば、きっともっと強く立っていられるんだろうな。
「……だからさ」
瞬が言葉を続けようとしたので、落ちた視線を上げる。
届いたのは──
「有咲も、俺の言葉だけ信じてほしい」
濁りなき眼だった。