朝、キスして。

「……からかってるなんて思ってないよ」

「でも、嘘だとは思ってたわけだ」

「うっ……」


鋭い。

というか、今の誘導の仕方はずるい。


「俺の言葉を信じてって言っただろ。嘘は言わねぇよ」


そうだった。

瞬は『信じて』って言ったんだ。

もう早速、戸惑いで受け止められてないよ、私。


「し、信じるけど……いきなりだったから……」

「うん、わかってる。別に答えがほしくて言ったわけじゃない」


視線を逸らした瞬の横顔はどこか物憂げで……。

私は、儚さを持ったその横顔から目を離せなかった。


だけど、すぐに視線が戻ってきて。


「ただ俺の気持ちを知ってほしかったの」


まっすぐと穏やかにぶつかる。


「長く一緒にいるから言葉にしなくても通じるけど、それでも、言葉にしないとわからないことの方が多いから」


撫でるような声で紡いだ言葉。


ようやくわかった。

なんで瞬が今、私の前にいて、そんなことを言うのか……。

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