朝、キスして。

そしたら、前もって答えを用意しておくことができた。

たとえば、

「知らない」って言えば済む話だった。


だけど、間を取った時点で、その言葉はもう期限切れ。


自分で蒔いた種だから、自分でどうにかしないと……。

ど、どうしよ~……。


じわり冷や汗が滲んだとき。


「何言ってんのー。瞬には有咲がいるでしょ」

「そうだよ」


何も知らないママたちが口を挟んでくれた。


た、たすか…………ってない!!


いや全然助かってないよ!

思いっきり、油を注がれたよ!


「それはあくまで俺たちの願望だろ。実際、2人の気持ちは……」


実は、願望じゃないんですよ。

でもこれ以上、深掘りしないでください。お願いします……。


頭を下げて懇願したくなった、そのとき。


────コンコン。


扉を叩く音がして……。


「失礼します」


店員さんが追加の料理を運んできた。


お、おおぉ……神!

店員さんが神様に見える……!


店員さんの登場で流れが断たれ、話は完結。

私たちが付き合っていることは、話さないで済んだ。


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