朝、キスして。

やがてお酒がいい感じに入って、大人たちがほんのり赤みの帯びた顔を見せ始める。


「同じクラスってことは、席も前後だったりするわけでしょ。俺らもさー……」


私たちに訊いているのかと思えば、そこから始まる高校時代の思い出話。


そうなると、私たちは蚊帳の外。

親が話している内容を適当に耳に入れるだけ。


「有咲、これ食った?」


愉快な声をBGMに箸を進めていると、前の席に座る瞬が話しかけてきた。


「なにそれ?」

「つみれ。なんこつが入ってて美味いよ」

「まだ食べてない……!」


肉や野菜がたくさんの鍋料理。

そんなものまで入っていたなんて知らなかった。


なんこつ入りのつみれなんて絶対美味しいじゃん!

確定演出だよ!


しかし、自分のお椀には入っていなくて。

鍋に残っているかなと、中を覗いて探そうとしたとき。


「はい」


先に瞬が、箸でつまんだつみれを差し出してきた。

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