朝、キスして。
EP.09*煽ったのはそっち
*優雨Side*
「優雨ー!」
お茶にしようか、紅茶にしようか。
自動販売機の前で何を買おうか迷っていると、私を呼ぶ声がした。
「ちょうどよかった」
声をかけてきたのは、2人の女子。
1人は、私の記憶のどこを探しても憶えがない名前すら知らない子だけど、もう1人は中学のとき3年間同じクラスだった友達。
高校に入ってからはクラスが離れてほぼ会えていないから、久しぶりに顔を見る。
彼女は購買で買ったらしきパンを抱えていて、たまたま私を見つけて声をかけてきたのだとわかった。
「優雨、元D組のグループラインから抜けてたよね?今度、クラス会しようってことになったんだけど、参加するー?」
元D組──中学3年生のときのクラス。
わりと仲の良いクラスだった。
合唱コンクールのとき率先して自主練をしたり、担任の先生の結婚祝いをサプライズでしたり。
クラスのグループラインも頻繁に動いていた。
仲良しの定義が人それぞれ違うとしても、中学3年間で1番楽しくて仲の良いクラスだったと思う。
でも、卒業したあともしばらく動いていたそれは、1ヶ月も経たないうちに過疎化した。
私がグループから抜けたのは、半年くらい前。
アルバイトを始めて、グループ整理をするついでに退会した。