朝、キスして。
***
「瞬、おはよ」
「おう!」
クラスの男子が瞬に挨拶しつつ、通り過ぎる。
少し前までは、「あれ、もう来てんの?」だった挨拶が、気づけば瞬がいるのが当たり前に。
そんな朝の教室。
身体を横に向けながら、後ろの席の瞬と話していると……。
「そうだ」
思い出したように瞬が言った。
「どうしたの?」
「昨日さ……」
何かを言いかけたとき。
「おはよう」
挨拶が届いた。
瞬は友達が多いからまたクラスの誰かかな?と思いつつ、顔を上げてびっくり。
挨拶してきたのは、優雨ちゃんだった。
朝の喧騒を物ともしない凛とした空気を背負う優雨ちゃん。
どことなく表情に毅然さが窺える。
……いやそれよりも。
今まで優雨ちゃんが、わざわざ挨拶しにきたことがあったかな?