朝、キスして。
*優雨Side*
有咲がいなくなったあと、私は瞬に声をかけようと思ったけど、かけられなかった。
「次のバイトいつ?」
代わりに瞬が話しかけてくる。
「木曜日だけど……」
「昨日と同じ時間?」
「うん」
「わかった」
それだけ会話して、席を立った。
抑揚のない瞬の声に、私はぞくりと背中に冷たいものを走らせた。
なぜ声をかけられなかったのか。
まとう空気がとにかく不機嫌だったから。
怒りとも違うし、落ち込んでいるのとも違う。
機嫌が悪い。
その言葉が1番しっくりくる。
比較的穏やかな瞬がここまで感情を崩すのだから、有咲の言葉が余程効いたのだろう。
でもまさか、有咲の言葉を本気にするとは思わなかった。