朝、キスして。

なんのタイミングだったか、空を見上げながら考えていた瞬がふと俯いて。


「だってさ、むかつくじゃん。俺は有咲の彼氏なのに……よくあんなことが言えるよな」


ぽつり呟いた。


初めて見る弱気。

横顔に浮かべる笑みは悲しげで。

どういうわけか私も心が締めつけられる。


「それで……、それだけの理由で迎えにきたの?」

「うん。……あ、いや。優雨を心配する気持ちもあるよ」


瞬は慌てて取ってつけたように言った。


普通そこは、嘘でも“心配”を先に出すものじゃないの?

何があっても何をしようにも、どんな感情を抱くにしても、有咲が1番。

素直すぎて、そんな心が透けて見える。


結局、瞬の原動力は全部有咲なんだ。


「有咲も本心で言ったわけじゃないだろうし、落ち込むことないと思う」

「俺は本心が聞きたいんだけどなー」

「好きだから本心が言えないんでしょ」


恋ってそういうものだと思う──的な感じで言ったけど、恋がどうとか好きがどうとか語りたいわけじゃない。

ただ、一般論だとしても、何か言葉をかけずにはいられなかった。

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