朝、キスして。

ああ……、私のスマホちゃん。

最後まで丁寧に扱ってあげられなくてごめんね。

思い返せばもう早いもので……。


なんて懐古している間もなく、スマホは地面に落ち──


「おっと」


ることはなかった。

ぶつかった相手が咄嗟に掴んでくれたおかげで、スマホちゃんは無事に救われた。


しかし、本当の災難はこのすぐあとに起こった。


「ごめんなさい!ありがとうござ……っ」


検索結果が表示されたままのスマホ。

手にした相手がその画面を注視する。


〈修行 おすすめ〉なんて恥ずかしい検索を見られた……!

しかも、その相手というのが──


「……修行?」


ハルくんだった。


いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


顔では平常心を保ちつつも、心の中は阿鼻叫喚。


「修行するの?」


ハルくんがそう言いながら、スマホを返してくる。

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