朝、キスして。
***
うっすら雪化粧のような雲が月光を塗る夜。
湿り気が乗った風は身体にまとわりつくような暑さを残している。
「はい」
コンビニを出て、瞬がアイスの半分を手渡してきた。
チューブ型の、1つ買えば分け合いっこができるアイス。
チューブの口を噛みしめれば、ジャリッとした触感と柔らかいコーヒー味が口に広がった。
「優雨ちゃん、働いてたね」
「そりゃあ、バイト中だからな」
振り返ると、コンビニのレジで接客中の優雨ちゃんがいる。
ここは優雨ちゃんがアルバイトしているお店。
どうして私たちがここにいるかというと、今日優雨ちゃんがバイトだから「一緒に迎えにいこう」と瞬に誘われたため。
そうなんだよね。
別に瞬1人で優雨ちゃんを守る必要はなくて、私も一緒に守ってあげればよかったんだ。
それなのに、あのときの私は焦っていたから『しばらく瞬が彼氏のふりしてあげれば?』なんてとんでもない提案をしてしまった。