朝、キスして。

まもなく時刻は夜の10時を迎えようとしている。

優雨ちゃんのバイトが終わるのを、アイスを食べながら店の前で待つ。


「その……、最近よく来るっていうお客さんは、今もいるの?」

「わからない。俺は顔をちゃんと見たわけじゃないから」


見渡せる範囲にそれらしき人影は見当たらない。


店は車通りに面しており、街灯や信号、ときたま通る車のヘッドライトなど灯りは充分にある。

けれど、家までの帰り道は閑静な住宅街が続くだけの道。


一度だけ優雨ちゃんの家に借り物をしに行ったことがあるからわかる。

そのときは昼間だったけど、夜には暗く静かになることが安易に想像できた。


思い過ごしであってほしいと、今は強く願う。


< 227 / 343 >

この作品をシェア

pagetop