朝、キスして。

驚きと恐怖で声が出ないし足も動かない。

こういうとき頼りになるのが、咄嗟に私たちの前に出てくれた瞬。


「なに?」

「あ、あの……!俺、鈴木って言います!」


鈴木と名乗った男の子は、「ストーカー」「不審者」「危険人物」──限りある怪しい言葉を連想させるにはいささか無理があった。

なんというか、ちょっと前のめりだけど、それ以外は普通の男子という感じ。


……ってダメだよね、見た目だけで判断しちゃ。


「そっちの子に話があって……」


そっちと言って男の子が視線を合わせてきたのは──。

え……。


「私!?」


こくり頷く男の子。

まさかの私だった。


「知り合い?」と瞬が眉をひそめて訊いてくる。


そう問われると、知り合いのような……いや知らない人だ。


私が知っているなら当然、瞬も知っているはず。

幼なじみの瞬が知らない男子の知り合いは、私にはいないから。

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