朝、キスして。

「ううん、知らない。どこかでお会いしましたっけ?」

「いや、前に見かけたことがあって」


見かけたって……それなら知らないはずだよ。


そもそも、この人が本当に“最近、バイト先に来るお客さん”で合ってるの?


「優雨ちゃん。この人が例の……」

「う、うん」


耳打ちで優雨ちゃんに訊いてみれば、やっぱり彼が優雨ちゃんのストーカーらしい。

それがどうして私なんかに話が……。


「前に駅で見かけたときからずっと気になってて……」


すぅっと息を吸う時間を置いてから彼は、黒ぶちメガネの中の瞳をきらりと輝かせた。


「好きです!!いま付き合ってる人はいますか!?」


「え……、ええぇぇ!?」


彼が口にしたのは、耳を疑いたくなるような言葉だった。


い、いま……なんて言った?

好きって言った?

誰が、誰を……?


わざわざ言葉にしなくてもお分かりでしょう。

私、ただいま絶賛パニック中でございます!

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