朝、キスして。

思えば16年、告白されたことはあれど、知らない人から一目惚れされて告白されるのは初めて。

好意を持たれることは嬉しいけれど、正直戸惑いが大きくて……。


「え、あの……優雨ちゃんのことが好きなんじゃ……?」


答えなきゃいけない答えを答える前に、疑問を打ち返してしまった。


だって、優雨ちゃんのバイト先に現れて後をつけて、今こうして私たちの前に現れて。

普通は優雨ちゃんに用があるのかと思うじゃない?


「優雨ちゃん?……ああいや、前に見かけたとき彼女も一緒だったから、君のことを聞きたくて。ここでバイトしてるのは知ってたから」


あ、そうですか……。

ちらっと優雨ちゃんを見ると、複雑そうな顔を向けていた。


極端な話、私のせいで優雨ちゃんに怖い思いをさせてしまったようなもの。

恐怖から開放された安心感やら、巻き込まれたことへの戸惑いやらがあるのかもしれない。


「それで、彼氏はいますか?」


念を押すように訊かれて。

そうでした。そう問われて、私はちゃんと答えないといけなかった。


……だけど。


「俺が彼氏だけど?」

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