朝、キスして。

私が答えるより先に瞬が答えた。

不服そうに見下ろして。


えらそー……。

彼氏のあとに“様”がつきそう。


「え……、えっ?あんたが?そっちの子とつき合ってるんじゃないの……?」

「は?」

「だってこの前も一緒に帰ってたし」

「ちげーよ。あれは、おまえが後をつけたりなんかするからだろ。ストーカーだと思ったんだよ」


どうやら彼は、優雨ちゃんと瞬がつき合っているものだと思っていたらしい。

たとえ勘違いだとしても、心が痛い……。


ああもう、やだやだ。
ちょっとのことで嫉妬心が出てくる。


邪心を振り払うように首を振ったとき──


「俺の彼女は有咲だけだから」


瞬が言ったのは、私の言葉に対する答えだった。


『しばらく瞬が彼氏のふりしてあげれば?』


魔法みたい……。

私にとっての魔法。


ジメジメした気分も悪い心も、瞬の言葉ひとつで晴れる。

単純。

嫉妬心の原因も瞬なのにね。


ずっとそう。
心を動かされるのは、ぜんぶ瞬にだけなんだ。

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