朝、キスして。

家が隣だからわざわざ門の前まで来てくれなくてもいいのに、瞬は私が家に入るまで見送ってくれる。


「ありがとう」


門扉を閉めて、お礼を言った。


「うん」

「それじゃあ、おやすみ」

「おやすみ」


いつでも会いにいける距離。

連絡を入れたら数秒で駆けつけてくれる距離。


それでもお別れのときはやってくる。バイバイしないといけない。


近いからこそ、どんな関係にも距離は存在するのだと思い知らされる瞬間。


「有咲」

「ん?」


呼び止められて振り返った。


「やきもちついでにもう1ついい?」

「うん、なに?」


一度離れた距離を戻して近づいた。

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