朝、キスして。
家のなかに瞬はいなかった。
まだ帰ってないらしい。
瞬ママからタオルと着がえを借りることになった。
「タイミングよかったよ。ちょうど買い物に行こうとしてたところだったの」
「そうなんだ、よかった」
どうやら不幸中の幸いは、かなりラッキーな幸いだったみたい。
「勝手に飲み物とか飲んでいいからね。なんなら瞬の部屋を掃除してくれても……」
「あはは、わかったー!いってしゃらっしゃーい」
瞬ママを見送ってから、洗面所で着がえをする。
昔から家を行き来するのが当たり前で、瞬の家はおじいちゃんの家よりも実家に近い、第二の自分の家という感覚。
だから、どこに何があるかとか何を使っていいかとか、そういうのも全部把握している。
……といっても、それは中学生までの話。
一度距離ができて高校生になった今、同じように過ごせるかといえばちょっと悩みどころだ。
そんなことを考えながら着がえていると、
──ガチャリ。
鍵の開く音がした。
あれ?瞬ママ戻ってきたのかな?