朝、キスして。

「いやさぁ……、彼女」


と私を指さして言う。

そして、自分を指して。


「彼氏。……俺ら、つき合ってんだよね?隠れる必要なくね?」

「はぁ?そういう問題じゃないでしょ!」

「そう?男子なら見たいって思うのが健全じゃない?男の本能。むしろ、思わないほうがおかしいっつーか……」


入口に立ったまま見下ろしてくる瞬は、悪びれる隙すら見せない。さも当然のように……。


「見たからって何かあるわけじゃないじゃん」

「うんそうね。でも、見ないと後悔する……気がするような、しないような?」

「……テンパってる?」

「ちょっとね」


照れくさそうに笑う瞬。

今その笑みを見せるのはずるい……。


私が強く拒否しないのをいいことに近づいてきて、しゃがむ私と目線を合わせるように腰を落とした。


泣き喚いてまで拒否しなくても、「やだ」そのひと言できっと瞬は諦める。

無理に見ようとはしない。


だけど、全力で拒否するのも違うし、そういう目で見てくれる嬉しさがないわけでもない。


そうなんだよ。

中途半端にときめいてるから厄介。


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