朝、キスして。

瞬は「随分、好き勝手言ってくれてんな」とジトッとした目を向けてくる。


「どうして?吉田くんたちと帰ったんじゃ……」


今日は吉田くんたちと勉強するって聞いてたから、もう帰ったものだとばかり……。


「忘れものしたから戻ってきたんだよ。そっちこそ何してんの?」


あっ、よかった。

何してるのか訊くってことは、その前の会話は聞かれてないよね?


「私は……」


話を聞かれていなくてほっと息をついたけれど、安心に浸る間もなく別の理由でまた困惑がやってくる。

なんて答えたらいいのか……。


「ちょっと話してただけ」


そんな私の代わりにハルくんが返答してくれた。

曖昧に答えをこぼしながら腰を上げて、


「哲学的な話」

「?」


もてあそんでいるとしか思えない言葉を残しながら去っていった。


哲学……。

10のうち1にも満たない話題を、“した”と言えるのかな。

言えない気がするけど、0じゃない限りは嘘とも違う。

かなり意地悪な答えだと、私は思った。

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