朝、キスして。

「ハルとしてた話、俺にできる?」


ハルくんの背中を見送ったあと、瞬が私の前にしゃがんで訊いてきた。

段差に座る私のほうが高いせいか上目遣いに見上げてくる。


「……」


瞬から目をそらす。それが私の答え。


「ハルにはできて、俺にはできない?」


ハルくんだからできるわけじゃなくて、瞬だからできない。

でも……。


「わかった」と明らかに声のトーンを落として、立ち上がった瞬。


「気をつけて帰れよ」


私の頭をぽんぽんと撫でてから校舎に戻っていった。


私は、引きとめられなかった。

もうぜんぶ勝手に察してよ、なんて自己中で投げやりなことを思ってしまった。


ごめん、瞬……。


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