朝、キスして。

繋いでいたハルくんの手がするりと落ちた。

もう力で引きとめなくても私は逃げないってわかったみたいに……。


確かに逃げるつもりはない。

けど、今のはどういう意味……?


「今の有咲にこんなこと言うのは酷かもしれないけど」


手で引きとめるよりも強く、ハルくんの瞳が私を捕まえる。



「俺は有咲のことが好き」



落ち着いた表情と声で紡ぎ出されたのは、まっすぐな想いだった。


勘違いじゃなかった。

『つけ込む』はそういう意味で言ったんだ。


ハルくんが私を好き?

……いつから?


ハルくんの気持ちに気づきもしないで、私は無神経にも瞬の相談をしていたの?


まっすぐ伝えられた言葉は正直、嬉しかった。

今の私は、気持ちを言葉にする難しさと言葉にしてもらえる嬉しさを身にしみて知っているから。

素直に嬉しいと思える。

< 300 / 343 >

この作品をシェア

pagetop