朝、キスして。
だけど同時に、もしかしたら知らないうちにハルくんを傷つけていたのかも……って怖くなった。
「私は……」
「わかってる。返事はいらない。そういうつもりで言ったんじゃないから」
とそのとき。
ハルくんの後ろからパタパタと足音が聞こえた。
振り返るハルくんの先に、走ってやってきた瞬が見えた。
ハルくんは私に向き直って。
「有咲が今みたいに逃げ出したくなったとき、もしその先に誰かいるなら俺がいたらいいなって思った。それだけだから」
そして最後に、
「逃げたくなったらおいで」
滅多に見せない優しい表情と声でそう言った。
ハルくんは踵を返して、瞬の横を通りすぎていった。