朝、キスして。

急に空気を変えた。

弱々しい声に私の胸がぎゅっとつかまれる。


……瞬?



──キーンコーンカーンコーン。


突如、授業開始を告げるチャイムがとどろいた。


休み時間特有の賑やかな世界が、早送りするように慌ただしくなる。


廊下にいた人は教室へ。

友だちとだべっていた人は、会話を切り上げて自分の席へ。

足音、椅子を引く音、小さなしゃべり声。


それらのノイズを遠くに感じる私たちの周りは、ずっと膜を張ったように静かなまま。


戻らないといけないのに瞬は動こうとせず、そんな瞬を私も無理に引き離す気にはなれなかった。



「ハルの気持ち知ってた。知ってたのに、止められなくて……」


鐘の音が鳴りやんで、瞬がぽつり言葉を落とす。


「『好きになっちゃったもんはしょうがない』」


ズキンと胸が痛んだ。

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