朝、キスして。

瞬みたいに、マイナスをプラスに変えて考えられたらいいなって思う。

でも私にはまだ早くて、焦る。

そうやって言えるような人に早く──


「──なんて言えるほど俺、余裕ないよ」

「……え?」

「ごめん、すっげぇ勝手なこと言う」


心に入り込んでくる言葉や声は、私まで切なくなるほど苦しさを帯びていた。


心臓の近くに瞬の顔があるから、顔を見て話すときよりも直接言葉が響いてくる。


「ムカつく。なんで好きになんの?俺以外、だれも有咲を好きになるなよ。有咲も、他の男から好かれてんじゃねぇよ」


どうして……?

まるで自分の心を覗いてるみたい。


……ううん、覗いてるだけじゃない。

私の心をそのまま映し出しているような想いの数々。


「ハルに取られたくない」


声がかすれるほど痛々しく絞り出したのは、たぶんすごく身勝手な独占欲。


ないほうが生きやすくて楽しい。

あったら面倒くさい、邪魔なもの。

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