朝、キスして。

「……」

「……」


私たちの間に沈黙が流れる。


たぶん、お互いにまだ言い足りないことがあって、どっちが先に言葉にするか探っている状況。


先に破ったのは、有咲だった。


「思ったこと言ってもいいかな?」

「うん」


「すごくカッコ悪いこと言うね」と前置きをして。


「私は優雨ちゃんのこと友だちだと思ってるし、好き……だけど、だからって瞬を譲れるわけじゃないし、応援とか尊重とかもできない」


最後には、


「瞬を取らないでほしいとしか言えない」


今にも泣きそうな声を絞り出した。

叩かれるよりも刺されるよりもずっと痛い。


取るわけないのに……。

取れるわけないのに……。


仮に私が彼女がいようが気にしない肉食女だったとしても、瞬は有咲しか見ない。

そんなのわかりきってる。


それでも有咲は不安になった。

私が不安にさせてしまった。

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