朝、キスして。
「私も瞬が好き。……でもそれは、有咲が瞬に抱いてる好きとはちょっと違うんだ」
有咲の気持ちに応えるように、私も本音を口にする。
「前に話したけど、どうせいつか切れる縁なら私は最初からいらないって思ってる。時間の無駄……とまでは言わないけど、いつか関わらなくなるなら踏み込んでまで関係つくる必要あるのかなって」
昔、信頼していた人に裏切られて、もう誰も信じないと決めた──ってレベルの大それたものじゃない。
この先、高校を卒業して大学生になって、大学も卒業して社会人になって……。
何度だって出会いと別れが繰り返される。
そのたびに泣いて傷ついて、また新たに人間関係を構築し直さなきゃならない。
それが面倒くさいなって思っただけのこと。
だけど──
「ただ、だからこそ憧れもある。切れない縁、リセットされない関係……あれば素敵だなって」
いらないと切り捨てるのはこだわりであり、こだわりは裏を返すと強い憧れでもある。
いいなと羨んで、ほしいなと乞う。
私が望んでいたものは、適当に過ごせる環境じゃない。
本当に望んでいたのは、どんなことがあっても切れない強固な縁。
「瞬と有咲はそれを持ってる」