朝、キスして。
憧れを持っている2人に惹かれるのは、ごく自然な流れだったように思う。
「私が瞬に惹かれたのはね、瞬が有咲に一途だからだよ。生まれてからずっと一緒の“幼なじみ”っていう関係を続けられているから好きになった」
一度、距離を置いた時期があった、と有咲が言っていた。
いま普通に話せているのが不思議なくらい決定的な亀裂だったと。
一度離れたのに、再び通じ合っている。
そんな有咲と瞬だから特別に思えた。
「私にとっての瞬の魅力って有咲がいるから成り立ってるようなもので、有咲のことが好きな瞬が好きなの。逆にいえば、もし有咲を好きじゃなくなったら私の興味もそこでなくなると思う。それってさ、恋って言えるのかな?」
特殊な感情すぎて遠回りしちゃったけれど、答えが出ればあっけない。
私の瞬への好きはそういう形。
「あのときはそれがまだわからなくて、有咲に罪の意識を持てば気持ちが消えてくれるかなって……無神経なことした。本当にごめん」
「ううん。優雨ちゃんの気持ちが聞けてよかった。聞かなかったら、曖昧なまま友だちを続けていたと思うから」
「そうだね」
本当にそう思う。
曖昧なまま友だちでいるのは嫌だ。
有咲はもう、適当に過ごす高校生活のそのとき限りの知り合いなんかじゃない。
憧れを形にしてくれる、友だちだ。