朝、キスして。
*ハルSide*
「瞬なら今、地学講義室に1人でいると思う」
有咲がそう伝えると、優雨は階段を上っていった。
たぶん、これから話をつけにいくのだろう。
「話できたみたいだな」
俺は物陰から姿を見せた。
突然の声にびっくりしたのか、有咲がバッと勢いよく振り返る。
『優雨ちゃんっ』と有咲が駆けていくのが見えて思わず後を追えば、有咲と優雨が話を始めた。
盗み聞きしたみたいになってしまったが、優雨に余計なことを言った自覚があった俺としては見届ける責任があった。
「ハルくん!いたの……」
「悪い。ちょっと気になって」
「ううん、ありがとう。優雨ちゃんに話してくれたんだってね」
「いや……いらない世話やいたかも」
「そんなことないよ」
有咲は口元に小さな笑みを作りながら、たぶん無意識に、視線を落としていた。
「今までも気にかけてもらって、話を聞いてもらって。救われてた」