朝、キスして。
最終話*朝、キスして。
「え、わっ!ちょっ……」
「有咲!」
人混みに流されそうになって、瞬の手を離さないようにするのが精一杯で……。
私はなんとか耐えたけれど、サンダルが人混みに流されてしまった。
「ど、どうしよう!サンダルがない!」
「ちょっと待ってて。俺、探してくる」
片方のサンダルがないに気づいたのは、人混みを抜け出したあと。
瞬がすぐに探しにいってくれた。
中学1年生の夏休み。
地元の大きな花火大会に瞬と遊びにきたときのこと。
花火の打ち上げが終わって帰ろうとしたら、同じく帰ろうとする人の流れに巻き込まれてサンダルを失くしてしまった。
「ごめん。見つからなかった」
しばらく待っていると、申し訳なさそうに瞬が戻ってきた。
「ありがとう。大丈夫、このまま帰るよ」
「家までケンケンして帰るの?」
「うーん……裸足で歩いて?」
「危ないよ」
瞬はそう言うと、私の前でしゃがみ込んだ。
なぜか背中を見せてくる。