朝、キスして。

そもそも私は一度、瞬と向き合えなくて距離を置いた。

また関わるようになって、もう二度と距離ができるのは嫌だって思ったのに……忘れてた。


好きなのに話せないのが、どんなに辛いか。

傍にいて話せるのが、どんなにすごいことか。

私は誰よりも知っている。


「嬉しいことも辛いことも全部、真っ先に瞬に話したい」


瞬の腕のなかにいるせいかな。

さっきまで泣いていたのが嘘のように、気づけば穏やかな気持ちになっていた。


「ハルくんにも伝えたよ。返事はいらないって言われてたんだけど、どうしてもそれだけは伝えたくて」

「そっか。まあ、ハルに話すくらいなら俺に話してほしいけど……。でも、無理してまで話さなくていいから。自分の気持ちを1番大切にして」


痛いほど身にしみる優しい想い。

私は、瞬の背中に回した腕に力を込めた。


「瞬、好きだよ」


どんなに回り道をしたって、どこへ逃げたって、結局たどり着くのはその言葉。

私のなかの絶対的王者として君臨し続けている。


だから、絶対に見失うことはないんだ。



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